民泊の「夜間苦情受付コールセンター」とは? 2026年10月から3自治体で試行——運営者が今から準備すべきこと

本記事は2026年9月14日時点の公開情報に基づいています。
結論から言うと——2026年10月から2027年3月まで、京都市・東京都新宿区・墨田区の3自治体で、民泊の夜間の苦情を受け付ける「夜間苦情受付コールセンター」が試行されます。観光庁の担当者は取材に対し、夜間に事業者と連絡が取れない場合は不適切な管理とみなす、と説明しています。コールセンターから自治体への情報提供は、業務改善命令などの行政処分の根拠の1つになり得ます。
民泊運営者がいま準備すべきことは、
(1)検知——騒音を苦情になる前に気づく、
(2)即応——夜間に連絡が取れる体制、
(3)記録——対応の履歴を残す、
の3つです。
夜間苦情受付コールセンターとは
夜間苦情受付コールセンターとは、観光庁が2026年10月から3自治体で試行する、民泊への夜間の苦情を住民から受け付けて事業者に対応を促す窓口です。これまで日中の苦情は各自治体の保健所が受けてきましたが、夜間の受け皿はありませんでした。
正式な事業名は「住宅宿泊事業等制度夜間苦情受付コールセンター試行業務」です。観光庁は2026年7月14日に企画競争実施の公示を出し、8月27日を提出期限として企業から企画提案を公募しました。国が1社に委託して実施する事業で、履行期限は2027年3月31日とされています。
項目 | 内容 |
正式名称 | 住宅宿泊事業等制度夜間苦情受付コールセンター試行業務 |
対象地域 | 京都市・東京都新宿区・墨田区 |
期間 | 2026年10月〜2027年3月(約半年間) |
受付時間 | 平日: 17時〜翌朝8時30分 / 土日祝: 24時間 |
予算 | 約2,000万円 |
実施体制 | 国が企業へ委託(公示2026年7月14日・提案提出期限8月27日) |
本格導入 | 試行の効果を見て検討 |
出典: 観光庁「企画競争実施の公示」(2026年7月14日)/J-CASTニュース(2026年7月17日)による観光庁観光産業課への取材。
なお、新宿区・墨田区は民泊の届出が全国でも特に多い自治体とされ、京都市も民泊をめぐるトラブルを抱えていると報じられています。試行地域は、苦情が集中しやすい場所から選ばれた形です。

この事業が目指している3つのこと
公示には、この試行業務が何を目的としているかが明記されています。運営者にとって重要なのは、これが「苦情を受け流す窓口」ではなく、記録を残して行政の監督につなげる仕組みとして設計されている点です。
事実確認 — 住宅宿泊事業者および住宅宿泊管理業者の対応状況等を確認する
記録の確保 — 苦情の内容と対応状況について、客観的な記録を残す
実効性の向上 — 自治体・国による指導・監督の実効性を高める
公示は、住宅宿泊事業における「騒音等の苦情や事業者との連絡不通といった問題」を挙げ、夜間時間帯に発生する苦情・通報への対応を補完するとともに、地方自治体による行政処分を行うための補助となるように試行する、としています。
ここで注意したいのが「住宅宿泊管理業者」という言葉です。確認の対象は事業者本人だけではありません。管理を委託している場合、委託先の夜間の対応状況も確認の対象に含まれます。「管理会社に任せてあるから大丈夫」とは言い切れない、ということです。
苦情はどう処理されるのか——5つのステップ
報道されている仕組みを、運営者の目線で整理すると次の流れになります。
受付 — 住民が夜間の騒音などの苦情をコールセンターへ連絡する
連絡 — コールセンターが事業者へ苦情を伝え、対応を促す
確認 — 住民や事業者への聞き取りで、実際に駆け付けたかどうかがチェックされる
判定 — 観光庁の担当者は取材に対し、夜間に事業者と連絡が取れなければ不適切な管理とみなす、と説明している
情報提供 — 苦情と対応状況の記録が、自治体へ提供される
このほか、抜き打ちの連絡調査も行いたいとされています。運営者にとっての最大の変化は、「夜間に電話へ出られるかどうか」自体が評価の対象になることです。

行政処分との関係——「即処分」ではないが、対応の記録は自治体に届く
ここが最も誤解しやすい点です。苦情が1件入ったら直ちに処分される、という制度ではありません。報道によれば、各自治体はコールセンターからの情報提供を根拠の1つとして、業務改善命令などの行政処分ができるようにする、とされています。つまり処分の判断はあくまで各自治体が行い、コールセンターの情報はその材料の1つです。また、この仕組み自体が3自治体・約半年間の試行です。
ただし運営者側から見ると、これまで「夜間は誰も見ていなかった」状態から、夜間の苦情と対応状況が第三者によって客観的に記録され、自治体へ届く状態に変わります。連絡が取れない・対応しないことが積み重なれば、それが行政の判断材料になり得る——ここが実務上のポイントです。

背景——苦情の実態と、強まる自治体の権限
観光庁が2022年3月にまとめた事業者への実態調査では、近隣などからの苦情のうち騒音が10.7%で最多、次いでゴミ4.7%、タバコ3.8%でした。宿泊者の徘徊や不適切な駐車・駐輪なども挙げられています。
さらに2026年7月15日、厚生労働省・国土交通省・観光庁の3省庁は、連名で「住宅宿泊事業法に規定する届出住宅に係るゼロ日規制等について(技術的助言)」を出しました。住宅地などの環境が悪化している場合に各自治体が条例で民泊を制限・禁止できるとし、営業日数の上限を「年0日」とする、いわゆるゼロ日規制を容認する内容です。
このなかで運営者に直接関わるのが、騒音計や出入口のカメラを設置してモニタリングを行うとともに、一定期間(過去1年間分など)のデータ保存などを条例で義務付けることが考えられる、という記述です。想定される地域として都市部が挙げられています。
ここは正確に読む必要があります。これは国から自治体への技術的助言であり、この通知自体が設置を義務化したわけではありません。義務が生じるのは、各自治体が条例を定めた場合です。ただし、国が「条例で義務付けてよい」と示した以上、条例化の動きは今後出てくると考えるのが自然です。実際に、墨田区は2026年4月施行の条例で営業を土日などに限っており、京都市も2026年度中の条例改正でさらに踏み込んだ制限を行う方針と報じられています。
夜間コールセンターは、この流れの中の一施策です。方向性は一貫しています——騒音への対応を、運営者の「自己申告」から「客観的に確認できる状態」へ。

民泊運営者が今から準備すべき3つのこと
1. 検知——騒音が苦情になる前に気づく
苦情の最多要因は騒音です。コールセンターに連絡が入ってしまうと、苦情が記録として残ることになります。より確実なのは、近隣が通報する前に運営者が騒音に気づき、ゲストに直接注意することです。騒音センサーを使えば、室内の音の大きさが基準を超えた時点で運営者に通知が届くため、苦情の発生自体を減らせます。
2. 即応——夜間に連絡が取れる体制をつくる
観光庁の担当者は取材に対し、夜間に事業者と連絡が取れない場合は不適切な管理とみなす、と説明しています。自主管理の場合は夜間の当番体制を、管理委託の場合は委託先の夜間対応の範囲(何時まで・誰が・何分以内に)を、契約書レベルで確認しておきましょう。公示では住宅宿泊管理業者の対応状況も確認の対象とされており、委託していれば安心、とは言えません。無人運営や遠隔管理の施設ほど、この制度下での負担は大きくなります。
3. 記録——対応の履歴を残す
この試行業務は「苦情内容及び対応状況の客観的記録の確保」を目的に掲げています。記録は行政の側で作られます。であれば、運営者の側にも記録があったほうがよい、というのが自然な備えです。いつ・どんな連絡を受け・何分後に・どう対応したかを残しておけば、聞き取りや調査の際に、対応の実態を自分の側からも示せます。センサーの検知ログや連絡履歴は、そのまま「対応していた」ことの記録になります。

騒音の早期検知にMinut(ミニット)
Minut(ミニット)は、宿泊施設向けの騒音センサーです。室内の音の大きさを常時計測し、設定した基準を超えると運営者に通知します。会話の内容を録音しない方式のため、ゲストのプライバシーに配慮しながら騒音の発生だけを検知できます。
夜間苦情コールセンターの試行が始まる10月を前に、「苦情が入ってから駆け付ける」体制から「苦情になる前に気づく」体制への切り替えを検討する価値があります。詳細は、資料請求もしくはお問い合わせフォームからご連絡ください。

よくある質問(FAQ)
Q1. 夜間苦情受付コールセンターはいつから、どこで始まりますか?
A. 2026年10月から2027年3月まで、京都市・東京都新宿区・墨田区の3自治体で試行されます。受付時間は平日17時〜翌朝8時30分、土日祝は24時間です。
Q2. 3自治体以外の民泊には関係ありませんか?
A. 試行の対象は3自治体のみですが、観光庁は、効果があれば本格導入を検討するとしています。また、2026年7月15日の3省庁連名の技術的助言は、騒音計やカメラによるモニタリングとデータ保存を条例で義務付けることが考えられる、と各自治体に示したもので、試行地域に限りません。各自治体が条例を定めれば、その地域の運営者に義務が生じます。
Q3. 苦情が入ると、すぐに行政処分されるのですか?
A. いいえ。報道によれば、コールセンターからの情報提供は自治体が業務改善命令などの行政処分を行う際の「根拠の1つ」と位置づけられており、処分の判断は各自治体が行います。ただし夜間に連絡が取れなければ「不適切な管理」とみなされるとされているため、連絡体制の整備は必須です。
Q4. 「不適切な管理」とみなされるのは、どんな場合ですか?
A. 観光庁の担当者は取材に対し、夜間に事業者と連絡が取れない場合は不適切な管理とみなす、と説明しています。なおこの表現の出所は報道取材での担当者の説明であり、公示の文面にはありません。実際に駆け付けたかどうかも、住民や事業者への聞き取りで確認するとしています。
Q5. 管理会社に委託していれば、運営者側の対応は不要ですか?
A. いいえ。公示では、確認の対象として住宅宿泊事業者だけでなく「住宅宿泊管理業者」も明記されています。委託先が夜間に連絡へ出られる体制になっているか、何分以内に対応するのか、契約の内容を確認しておくことをおすすめします。
Q6. 運営者は何から手をつければよいですか?
A. まず夜間に電話へ出られる体制の確認、次に、苦情になる前に騒音を検知する仕組み(騒音センサーなど)、そして対応記録の整備です。詳しくは本文の「準備すべき3つのこと」をご覧ください。
出典
観光庁「企画競争実施の公示——住宅宿泊事業等制度夜間苦情受付コールセンター試行業務」令和8年7月14日
J-CASTニュース「『民泊』の騒音、ゴミ…苦情続出で観光庁が対策へ 3自治体で試行の『夜間苦情受付コールセンター』とは」2026年7月17日 https://www.j-cast.com/2026/07/17516435.html
厚生労働省・国土交通省・観光庁「住宅宿泊事業法に規定する届出住宅に係るゼロ日規制等について(技術的助言)」令和8年7月15日 https://www.mlit.go.jp/kankocho/content/002011734.pdf
最終更新: 2026年9月14日